院長のこにしです。
先日京滋小動物研究会で、S F T Sウイルス感染症の勉強会を開催しました。
いつもの研究会よりも多数の動物看護師、獣医師が参加していただき、皆さんが興味を持っていることがわかります。
その際に得られた情報をぜひ飼い主様と共有したいと思いこの記事を書いております。
SFTSは人畜共通感染症であり、人での発生報告も日本では600人ほど報告されています。
闇雲に恐れるのではなく敵の情報を得てしっかり対策を取ること、万が一の際の対応等を頭に置いていくことはとても大切です
勉強会では大学の同級生でもあり、実際のこの病気に感染したという経験のある先生を招いて、体験談を聞くこともできました。
その先生自身S F T Sに感染したのではないかと思っても、診察してもらうお医者さんの病気の鑑別リストに上がってこないので、
自身が獣医師でSFTSウイルスに感染した動物の治療をしていた事を伝えることにより、迅速に検査をしてもらい早期の回復につながったとのこと。
私達よりも多くのS F T Sウイルス感染症に遭遇している先生の話は、これから我々がどのように対処すればいいかの勉強になりました。
幸い、当院では陽性の判断を下した動物はいませんが、疑わしい症状で遺伝子検査まで進んだ症例はいます。
研究会でも多数の質問があった内容から厳選して、8個にまとめ 3分で読めばわかる内容にまとめました。
1、そもそも原因はなんですか?
重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)ウイルスを保有するマダニに噛まれることで感染します。
全てのマダニがこのウイルスを持っているわけではないで、噛まれたら即感染というわけではありません。
2、実際、滋賀県での発生状況はどうなの?
滋賀県でも発生報告があります。
現在猫1頭犬1頭と少ないですが、
今後このような啓蒙活動の効果により、検査の頻度が増えれば報告も増えてくる可能性も高いと考えます。
西日本に発生が多いですが、最近では静岡県でも感染報告があったと報告があります。
3、動物のどんな症状があれば気をつければいいの?
見た目だけでは絶対に判断できません
よく外出する(特に猫ちゃん)
最近ダニをつけてきた
元気消失、食欲低下などの消化器症状がある
体が熱い! 発熱(猫ではほぼ100%と言われてます)
尿の色が濃い
4、今わかっている検査所見の特徴(動物)
発熱、元気消失、嘔吐、下痢、脱水
血液検査での特徴としては、
黄疸 T B I L Lの上昇
白血球の減少、血小板減少
C P K 、A S T、A L Tなどの肝酵素の上昇
炎症マーカーの上昇 猫SAA 犬CRP
そこで確定診断のため、SFTSウイルス遺伝子検査を行います
5、疑わしい動物に接する人は何に気をつければいい?何から感染するのか?
感染した動物の体液や汚物の接触や飛沫により感染すると報告されています。
血液や便には特に注意ですね
6、治療法はあるの?
残念ながら特効薬は、ありません。
基本的には、対症療法ができる治療です。
輸液、制吐剤、抗菌剤、痙攣(+)→抗痙攣剤などなど
7、実際に自分に怪しい症状が出たらどうしたらいい?
すぐに病院を受診してください。
50代未満の死亡報告は0です。若い方が治りはいいらしいです。
ただ、病気の鑑別リストの上位には上がってこない病気です。
このような病気の動物と接触し、感染したリスクが高いことを伝えることが大切です。
8、感染のリスクを減らすためにできることは?
自由に外出をさせない(特に猫ちゃん)
ノミダニ駆除薬をしっかり行う
特に注意しなければいけないよくあるパターンとして、ダニだらけの弱った動物を保護した際です。
なんとか助けてあげたいという気持ちの片隅に、こういう感染する病気があるんだなと思い出し、自分の身を守ることも忘れないでいただきたい!
我々は、日々いろんな病気の動物の診察にあたります。まずは見た目から、検査所見から疑わしいと思った場合は、即防護の徹底をとるしか方法はないと考えます。
使い捨て防護キット(グローブ、マスク、エプロン、フェイスシールド)を使用し
獣医師や看護スタッフ、飼い主様に2次感染させない最大限の努力をし、感染した動物の救命するためにできることを行う必要があると考えています。
病院前の花壇が草ボーボーになってましたが、美化担当のスタッフ中心に暑い中スッキリ綺麗にしてくれました。
休む暇もないくらいバタバタしている毎日ですが、少しでも飼い主様に過ごしやすい環境を提供したいという気持ちで、
自発的に考え、行動してくれるスタッフ達には感謝です。ありがとう!