こにし動物クリニック 獣医師の谷山です。
今回は猫の高血圧症について、
実際当院に通っていただいている猫ちゃんの症例と共にお話しさせていただきます。
日本人では約3人に1人が高血圧症とも言われておりますが、
高齢の猫においても高血圧症は非常に多い印象です。
警戒心が強い性格の子が多いため、病院で正確に数値を測定しづらいことから、診断が正確に行われないこともよくあります。
猫の高血圧症の内、多くは二次性高血圧症であり、特発性高血圧症は全体の13-20%とも報告されています。
二次性高血圧症の原因として最も多いのは慢性腎臓病で、慢性腎臓病の猫の1.5-2頭に1頭は発症していると報告されています。
他には甲状腺機能亢進症、高アルドステロン血症(循環血液量が増える病気)などが挙げられます。
そこから標的臓器障害のリスクによっても細分化されます。
収縮期血圧180 mmHgを超える場合を重度高血圧症と分類し、標的臓器障害リスクは非常に高いです。
先日来られた猫ちゃんですが、
嘔吐の直後から急に眼内出血が見られ、目が見えていなさそうとのことで来院されました。
様々な疾患が考えられますが、
突然の失明や眼底出血、前房出血などがみられた場合は、高血圧からきていることがあります。
身体検査や血液検査では特に異常は見られず、血圧を測定すると、
病院で緊張している状態ではありますが、
という重度の高血圧でした。
この猫ちゃんは症状が目に出ていましたが、
症状が出やすい組織として眼の他に、脳や心臓/腎臓などが挙げられます。
ISFM(International cat care)では、
と記述されています。
また、眼の出血や網膜の異常などの症状が見られるまで、
高血圧症による臨床兆候は見られることが少ないため、
定期的な血圧の測定(年1-2回以上)も推奨されています。
この猫ちゃんはその後頑張って飲み薬を飲んでもらい、
2週間後には収縮期血圧が173
1ヶ月後には152と順調に下がり、目の出血もおさまって元気に過ごされています。
ですが、高血圧症に用いられるお薬の大部分は、
病院では環境ストレスなどにより血圧が上昇している可能性が高く、
帰宅すると低血圧に由来するふらつきなどの歩様異常、運動不耐性(動きたがらない)を疑う徴候が見られないか注意です。
症状が現れるまで中々気付くことができないのが高血圧症ですので、
定期的なチェックが推奨されます。
参考にしていただければ幸いです。