栗東市、草津市、大津市、野洲市、守山市、湖南市、甲賀市の皆さんこんにちは。
滋賀県栗東市のこにし動物クリニック獣医師関原です。
今回は偶々出会った玉、もとい精巣の病気である「潜在精巣(停留精巣、陰睾)」についてご紹介します。
潜在精巣であったり潜在精巣が腫瘍化している場合、以下のような症状が見られる事があります。
・陰嚢内に精巣が1個しか触れない or 2個共触れない
・陰茎の横の皮下にポコっとした塊が触れる気がする
・毛が薄くなってきた
・雄なのに乳房や乳首が張っている気がする
こういった症状に心当たりがある場合は是非一度当院にご相談ください。
精巣は本来、内臓の一つでありお腹の中に発生します。
その後、お腹の中から陰嚢内へと精巣下降が始まります。
精巣下降が不完全に終わってしまった状態のことを潜在精巣といいます。
完全にお腹の中で止まっているケースもあれば、足の付け根(鼠径部)や陰茎付近の皮下まで下降しているケースもあります。
また片側だけのこともあれば、両方とも潜在精巣になってしまっているケースもあります。
精巣下降が完了するタイミングは「犬:生後1~2ヵ月齢で完了」、「猫:出産時には既に完了」ですが、最終的な判断は去勢手術を行う生後6ヵ月齢ごろに行います。
おうちのワンちゃん、猫ちゃんの睾丸を触ってみてください。もし6ヵ月齢を過ぎていて、睾丸が2つ触れない、もしくは1つも触れない場合は是非一度当院にご相談ください。
腹腔内や皮下に停留した精巣は時間が経つと、腫瘍化するリスクが非常に高くなります。
精巣の腫瘍は「セミノーマ」、「セルトリ細胞腫」、「ライディッヒ細胞腫」の3種類に分かれます。
セルトリ細胞腫の場合、女性ホルモンを分泌することで雌性化が見られます。
雄なのに乳房が張っている、乳汁が出るなどの臨床症状が見られる場合は是非一度当院にご相談ください。
セミノーマとライディッヒ細胞腫は摘出さえすれば予後は良好なことが多いです。
治療方法は潜在精巣の摘出、すなわち去勢手術です。
通常の去勢手術は、陰嚢の正中を切開し左右の精巣を摘出するため、下のような傷跡になりますが、潜在精巣の場合は精巣の位置によって手術アプローチが変わります。
【通常の去勢手術による傷口】
例えば、潜在精巣が腹腔内にある場合、陰茎の横から腹腔内へとアプローチするため、下のように傷口が2か所になります。
【潜在精巣が腹腔内に存在した場合の傷口】
潜在精巣が皮下の場合は陰嚢との距離によります。
陰嚢に近ければ単一の傷口からなんとかアプローチすることができますが、陰嚢からやや離れた位置にある場合は皮下の潜在精巣であっても傷口が2か所になってしまいます。
また、精巣が腫瘍化していた場合は転移が無いかなど、全身の精査が必要となることもあります。
・猫:メインクーン
・年齢:11か月齢
「精巣が一つしか触れない」との主訴で来院されました。
触診してみると確かに陰嚢内には玉は一つしか触れませんでした。
オーナー様に「まだ若いし、今なら潜在精巣が腫瘍化する前に手術できる可能性が高いです。」とお伝えし、後日去勢手術及び、潜在精巣の摘出術を行うことになりました。
ちなみに、猫の潜在精巣は非常に稀です。
文献によりばらつきはありますが、犬の潜在精巣発生率が約5%前後に対して、猫は1%未満です。
さらに、ほとんどが皮下陰睾であり、腹腔内陰睾は個人的には遭遇した経験はありません。
本症例も皮下陰睾でした。
手術中の画像がこちらです。
摘出後の精巣がこちらです。
正常の精巣と比較して、潜在精巣の方が小さく組織として未熟であることが分かります。
一方で腫大化や異常な変形は見られず、精巣が腫瘍化する前に摘出できました。
今回は男の子の生殖器の先天性疾患である潜在精巣(停留精巣、陰睾)についてお話させていただきました。
この病気は精巣が触れない以外に初期症状や自覚症状がありません。高齢になり精巣が腫瘍化してからでは治療が困難になるケースもございます。是非若くて元気なうちに去勢手術を検討してみてください。
気になることがございましたら是非一度当院までご相談ください。