こんにちは。獣医師の藤原です。
ずいぶん暖かくなり、当院も予防シーズンの到来を感じる忙しさになりました。
春先は、フィラリアやワクチンの接種に来られる方がとても多いので、今回の症例報告はわんちゃんで起こったワクチンアレルギーについてのお話です!
そもそも犬のワクチンアレルギーはどうして起こるのか?
ワクチンの中に含まれる牛由来のタンパク質に反応して起こります。
これは、ワクチンを製造する上で必要なものなので、入っていないワクチンは存在しません。
ワクチンアレルギーの症状は大きく分けると以下の4つ
*呼吸器症状:呼吸困難、促迫
*循環器症状:血圧や体温の低下
*皮膚症状:痒み、浮腫、紅斑、蕁麻疹
*消化器症状:嘔吐、下痢
投与直後〜1時間以内に起こるアナフィラキシーショックでは、呼吸困難や低血圧がみられます。
これは命に関わるため、緊急で血圧を上げる注射やアレルギーを止める注射をしなければいけません。
投与直後は大丈夫でも、数時間後に遅発性のアレルギー症状がでることがあります。
その場合は、皮膚症状や消化器症状がでます。
今回ご報告する症例はその皮膚症状がでたわんちゃんです。
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ミニチュアシュナウザーの女の子
初年度のワクチン接種は接種後も特に何もなく過ごしていました。
翌年、一歳になってからの混合ワクチン接種で、事件は起こりました…
投与後2時間程度で顔がぱんぱん!!
肛門周りもぷくっと腫れてる!!
ワクチンアレルギーによる皮膚症状がでてしまったのです。
本人も痒くてずっとかきむしっています。
すぐに消炎剤のお注射をして、他の症状がでないか容態をしばらくチェックしていましたがその他の症状はでず、半日くらいで痒みと腫れはひきました。
翌年、同じようにワクチンを打つとアレルギー症状がでることが予想されたので、事前に抗ヒスタミン薬を投与してワクチンを投与しました。
しかし、やはり数時間後に顔面が腫れてくる…!
症状は前回よりはマイルドです。
ワクチンの種類を変えて打つと起こらない場合があるので、今年はワクチンを変えて打ちましたが、やはり皮膚症状はでてしまいました。
症状でるの怖いしワクチン打たなくていいんじゃない?と思われた方もいるでしょう。
日本に流通している犬用の混合ワクチンは一年程度で抗体価が下がってきます。
この抗体の下がり方はもちろん個体差があって、2〜3年たっても下がらない子もいますが、概ね2年も経つと感染防御できる量でない場合が多いです。
ワクチンで予防する病原体は罹ると命に関わるような症状がでる感染力の高いものが含まれます。
発症した場合の治療手段は対症療法しかありません。
かかってしまうとわんちゃん自身が苦しむだけでなく、周りのわんちゃんの感染源にもなってしまう恐れがあります。
しっかり打っておけば…と後悔することがないように、毎年投与してもらうことがやはりおすすめです。
では、このわんちゃんのように、いろいろ対策を取ってみてもアレルギー症状がでる子はどうすればいいのか?
血液中の抗体価を測ってみるのがいいと思います。
抗体がしっかりあるなら、その年にワクチンを投与する必要がなく、接種回数を減らせます。
抗体価の検査は外注検査のため、結果がでるまでに1週間程度はかかりますし、費用もかかってしまいますが、アレルギーがでるタイミングを減らせるなら非常に有用だと思います。
来年は接種前に測ってみようかとお話しています。
前年度のワクチン接種でなにも起こらなくても、アレルギー反応が起こることはあります。
毎年大丈夫だしまぁ大丈夫でしょう〜と油断せずに、投与後の様子はしっかりチェックしてあげてください。
また、何か症状が出てしまった時、病院が開いている時間であるために、ワクチンの接種は午前中に来ていただくことをおすすめします!