こんにちは。獣医師の小西麻里です。
つぶらな瞳がチャームポイントウサギさん。
そんなウサギさんの目から涙が出ていたら心配ですよね。
今回はウサギさんの流涙症について、です。
「うちの子このごろ、涙で目の周りが濡れてしまうんです・・・目の病気でしょうか?」
と、診察に来られたウサギさん。5歳、ネザーランドドワーフのシナモンちゃんです。
お顔を見てみると、目頭から目の下あたりにかけて涙のような、目ヤニのような、ものがべったり。
色は無色ですが、ちょっとベタベタしています。
余談ですがウサギさんの涙はまばたきの回数を減らすため、犬猫に比べて粘度が高くできています。自然界で生き残るためには、まばたきなんてしていられない・・・というわけです。(ちょっと切ないですよね)
涙がベタベタしている分、乾くとカチカチに固まってしまいます。放っておくと皮膚がただれたり、そこの毛が抜けたりします。
診察に戻りましょう。
まず、眼の観察です。目の大きさ、左右差、痛みや痒みのサインの有無、結膜の状態などをみます。
場合によって角膜にキズがないか眼科用の染色液で調べたりします。
どれも異常はなさそうです。
目に異常が無く涙が多い場合、流涙症を疑います。
流涙症とは何らかの原因で、鼻涙管が閉塞あるいは狭窄して涙が目から溢れてしまう症状をいいます。
鼻涙管は目の周りで作られた涙が目を潤した後、鼻の奥の方へ流れていく排水管の様な役割をしています。
排水管が詰まったり、細くなったりして流れきれなくなった涙が目から溢れてしまうというわけです。
そんな時は排水管のお掃除、鼻涙管洗浄を行います。
細い管を排水管の入り口、涙点に挿入し洗浄します。
詰まっていなければ、お鼻からポタポタと洗浄液がすぐ出てきます。排水管が詰まっていたり、狭くなっているとなかなか出ません。
鼻涙管の閉塞は物理的に詰まっているだけのこともありますが、多くは歯のトラブルが絡んでいます。
何で歯???と思われるかもしれませんが、これはウサギさんが常生歯(一生伸び続ける歯)を持ち、上顎歯根部が鼻涙管に近いためです。
今回、シナモンちゃんは涙管洗浄で左右とも鼻から洗浄液が出てきたので、とりあえずの閉塞は解除できました。
ただ、歯根部の過長や炎症の影響を受けている場合は再発し易いです。
再発予防として、洗眼液の使用は良いかもしれません。(病院には洗浄用の点眼液があります。)
そして、普段から牧草をしっかり食べることが大切です。
ペレットフードを食べる時と牧草を食べる時とでは、顎を動かす方向が全く違うため、歯根部に与えるダメージにかなり差がでます。幼いうちからしっかり牧草を食べる習慣をつけることが一番の予防といえそうです。