こんにちは。獣医師の藤原です。
今回の症例報告は「体表にできるしこり」についてです。
体の表面にできるしこりは様々なものがあります。
しこりによっては悪性腫瘍もあり、皮膚から全身にひろがっていきます。
悪いものって見た目でわかるのでは・・・?と思っていたりしませんか?
以下にいろいろなしこりの写真を掲載します。
良性か悪性か考えてみてください。
・ココちゃん(仮名)、ミニチュアダックスフント、5歳、オス
肘にできた3cm大のしこり。やわらかく弾力がある。
わんちゃん自身はまったく気にしていません。
こちらは…
でした。
脂肪腫とは、皮下組織に脂肪細胞が集まってできる良性の腫瘍です。
良性ですが、だんだん大きくなってくることがあります。
ココちゃんは、今は気にしていない様子ですが、大きくなってくると歩行の妨げになるかもしれません。
大きくなってきて生活に支障がでるなら、手術で取り除いた方がいい場合もあります。
・るなちゃん(仮名)、ミニチュアシュナウザー、13歳、メス
足の指に出来た平べったく盛り上がったしこり。本人は気にしていません。
足の毛をトリミングしたときに見つかりました。
ちょっと分かりづらいかもしれませんが、隣の指と比べるとちょっと盛り上がって赤くなっています。
こちらは
という悪性腫瘍でした(>人<;)
軟部組織肉腫は筋肉由来の局所浸潤性の高い腫瘍で、グレードによってはできた部分から全身に転移することもあります。
悪性腫瘍ですので基本的には手術で摘出することが第一選択です。ですが、その腫れている部分だけを摘出しても周りに腫瘍細胞が残っているので、周囲の組織も2〜3cm少し余裕を持って摘出しなければいけません。
るなちゃんの腫瘍ができた場所は足の指で、そのような余裕を持って摘出することは不可能なので、指ごと取ることになりました。
取った腫瘍の病理検査結果は「グレード1の軟部組織肉腫」、転移することは稀なものでした。
手術で取り除くことができるものでよかったですね。
・みるくちゃん(仮名)トイプードル、3歳、メス
脇に1cm弱のしこり。丸くドーム状に盛り上がっている。またしても本人は気にしていません。
抱っこした時に何かあるぞ?と飼い主さんが気づいたそうです。
細胞を調べると、こちらは…
という良性腫瘍でした。
皮膚組織球腫は若齢のワンちゃんに多く、見た目は赤くなったり急激に大きくなりますが、1〜3ヶ月で自然に退縮してしまうケースが多いです。
ただ、大きくなる場合は4〜5cmくらいになることもあるので、できた位置が顔周りや足の裏など生活に支障が出る場合は、良性とはいえ1〜3ヶ月そこにあるままになるので、切除した方がいいこともあります。
さて、みなさん見た目でしこりが良性か悪性かわかりましたか?
私はこの病気が怪しいかな?という予想はできますが、残念ながら外からのビジュアルではわかりません。
またしこりが腫瘍ではなく、免疫の異常や感染症などの場合もあります。
上にあげた3頭の子たちはみんな細胞診で細胞を調べた結果、診断することができました。
「急に現れたしこり」「5mm 以上のサイズ」「どんどん大きくなっている」などに当てはまる場合は特に早めに細胞を調べた方がいいですね。
針で刺すのは痛そうだなぁと思うかもしれませんが、実際に首のしこりの細胞診をうけた人の話では全然痛くなかったそうですよ。
また、過去に良性腫瘍と診断されていてそのままにしている場合、そのしこりの中に別のしこりができていることがあります。
良性とはいえ、腫瘍はずっとそこに炎症反応が起こっている状態なので、他の皮膚と比べると腫瘍が発生しやすい環境ができているとも言われます。
「良性腫瘍って聞いてたけど、最近なんだか急に大きくなってきたぞ?」という場合は、再度細胞を調べてみた方がいいかもしれません。
体表の腫瘍を早期に見つけられるのは日々一緒に生活している飼い主さんです。
ペットさんと積極的にスキンシップをとってもらって、いつもと違うところはないか意識して体を触ってみてください♪