大切にお世話しているインコさんの羽根がぬけてきたら心配ですよね。
今回は羽根が抜けることについてお話したいと思います。
羽根が抜ける時にはいくつかのチェックポイントがあります。
鳥さんには換羽期といって羽根の抜け替わりの時期があります。
半年から1年の間に1度程度あります。いつ来るかということに関しては個体差が大きく、それぞれのインコさんでバラバラです。期間も短い子もいれば長い子もいます。
正常な換羽であれば、抜ける羽根は成長しきった使い終わった羽根です。
羽繕いで無理なく抜けます。通常どこから抜けたのかわからないぐらいです。
皮膚がむき出しになることはありません。もちろん血が出ることもありません。
それから筆毛とよばれる新しい羽根があちこちにツンツン出てきます。
こんな時は換羽期なので心配ありません。
ただ換羽期はとても体力を必要とする時期であり
体調を崩しやすい時期でもあります。
体調管理にはいつも以上に気を付けていただきたいと思います。
逆に、無理やり引き抜いている場合、皮膚がむき出しになっている場合、血が出ている場合、成長しきっていない羽根が抜けている場合は異常です。
原因は様々ですが今回はその中の2つをとりあげます。
1つ目はインコさんの毛引き症。
自分の羽根を自分で引き抜いてしまう病気です。翼の周囲や足の付け根などが好発部位です。なかには皮膚まで傷つけてしまったり、頭以外の羽根をすべて抜いてしまう場合もあります。
毛引きの鳥さんは何らかの強いストレスをかかえています。
完璧な治療法はありませんが、生活習慣や環境を変えストレスを軽減することで改善する場合もあります。
肝保護剤やビタミン剤、ホルモン剤などを使うこともあります。皮膚を傷つけているのであれば抗生剤の投与、エリザベスカラーの装着なども必要になってきます。
治療は一筋縄ではいかないと思います。
ですが「毛引きの鳥さんは苦しんでいる」という事を理解し、少しでも改善する努力が必要だと思います。
2つ目は「PBFD」。
ご存じの方も多いと思います。「オウムインコ類の嘴羽毛病」
文字通りオウムさんとインコさんの嘴と羽毛に異常があらわれる病気です。
文鳥さんなどのフィンチ類には感染しないといわれています。
PBFDはヒナ鳥に対して急性で致死的な症状を起こす一方、じわじわと発症して羽根の脱落等の症状を起こすタイプがあります。
特にセキセイインコさんでは巣立ち前後、風切り羽根や尾羽といった大きく長い羽根がうまく成長せず、未熟な状態のままポロポロ抜けてきます。抜けた羽根を観察すると羽軸に黒く血液が残っていたりします。
羽根自体も完成しておらず、半分鞘に入ったままだったりします。
現在、PBFDの特効薬はありません。
原因はサーコウイルスという免疫機構を壊してしまうウイルスです。
発症した場合、大型のオウムさんは助からないと言われています。
小型インコさんでは大型鳥ほど致死率は高くないものの、命を脅かす病気です。
ウイルスによって免疫機能が低下するため、様々な感染症にかかりやすい状態になります。
PBFDの確定診断にはPCR検査が有効です。
症状がある場合は、糞便や羽毛などが検体となり得ます。無症状であれば糞便・羽毛の他、血液があったほうが検査の精度が上がります。検査は専門の検査機関に依頼します。
PBFDは糞便、フケなどを介して周囲に広がり、周りの環境を汚染していきます。
お家に1羽以上鳥さんがいる場合は特に注意が必要です。
カゴを別々にする程度では感染は防げません。
生活空間を別々にする必要があります。飼い主さん自身が媒介者とならないように気を付ける必要もあります。
サーコウイルスは環境中に長く生存しているといわれています。PBFD感染のインコさんは隔離し感染を広げないようにしなければなりません。
PBFDを広げないためには感染鳥を見つけ出し、感染を広げない対策をとらなければなりません。
少しでも疑いがあれば積極的にPCR検査を受けていただきたいと思います。
このことも踏まえて、病院からお願いがあります。
どんな状態の鳥さんであっても、ご来院の際には必ず何らかのケースに入ってきていただき、他の鳥さんと接触のないようにお願いします。
また羽根や、糞便がケース外に出ないようご配慮いただきますようお願いいたします。
インコさんたちには治療法が無い病気がまだまだ沢山あります。
微力ではありますが、そんなインコさん達の力になれるよう頑張っていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。