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9月10日
症例集

胆泥症と胆嚢粘液嚢腫

こんにちは!獣医師の原田です。

みなさんお気づきかもしれないですが、獣医師チームは学術的なブログを更新することになりまして、私も今回その流れで症例報告をさせていただきます。少しでも参考になるように、分かりやすくお伝えできたらと思います。

 

今回お話しするテーマはタイトルの通り

「胆泥症と胆嚢粘液嚢腫」

です。

これらは胆嚢と呼ばれる臓器の疾患です。いきなり胆嚢って言われても・・・ってなると思うので、簡単に説明を。

言葉で説明すると

「胆汁という肝臓が作る消化液を一時的に貯留し、その成分を調整する臓器」

といったところでしょうか。

胆嚢は袋状の臓器で、胆管を通じて肝臓と十二指腸とつながっています。

人でも胆石とかなら聞いたことあるのではないでしょうか?

 

わんちゃんを飼っている方であれば、春と秋に健康診断を受けていただいた時に

ALT や ALP GGTといった項目が引っかかったことがある方も多いと思います。

また、他の疾患の検査時に偶発的に胆泥が見つかって、指摘された方なども結構いらっしゃると思います。

今回ご紹介させていただく、アースちゃんもそんなワンちゃんの一人です。

 

5年前・・・

違う疾患で検査中に偶発的に、胆泥が見つかりました。

血液検査でも異常がなく、胆泥に関連した症状もありませんでした。

また胆嚢の大きさも正常でしたが、胆嚢内容物の流動性の低下が認められたため、予防的に内服を使用してみました。

しかし、内服の反応は悪かったため、休薬し定期的なエコー検査をすることとしました。

2017年のエコー検査

胆泥はありますが、胆嚢の大きさは小さく、流動性も見られます。

ALT  ALP  GGT:正常

引き続き3ヶ月に一回の経過チェックと、健康診断での血液検査で経過を見ていきました。

2018年

この時点でも、胆泥はありますが、胆嚢の大きさはほぼ変わらず。流動性もありました。

ALT  ALP  GGT:正常

2019年はほとんど変わらず。

2020年

わずかに胆嚢の大きさは大きくなっていますが、本当に少しずつです。

流動性は相変わらず認められます。

ALT  ALP  GGT:正常

2021年

しばらく安定していたのですが、

5月ぐらいに急に胆嚢の大きさが大きくなり、流動性も低下したので、内服を処方し反応をチェックすることになりました。

ALT  ALP  GGT:正常

7月

内服の甲斐なく、胆嚢の大きさはさらに大きくなってしまっています。

さらに、エコーで白っぽい部分の周りの、黒い部分が急に大きくなりました。

この段階で、ついに

「胆嚢粘液嚢腫」の疑いが強くなりました。

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−胆嚢粘液嚢腫とは?

胆嚢内にムチンという粘液様の物質が充満することで、胆嚢が拡張し、

流動性が低下する原因不明の疾患です。

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ここで出てくるテーマが

①胆嚢粘液嚢腫と胆泥の関係性

②胆嚢粘液嚢腫の手術のタイミング

です。これが大きなポイントです!!

まず①から

胆泥症は胆嚢粘液嚢腫に発展する病気なのか?

ここである有名な論文の図があります

こいつを見ると、胆泥症が胆嚢粘液嚢腫に発展していきそうなのですが、

そう単純な話ではないのが厄介なところです。

結論から言うと、胆泥症から胆嚢粘液嚢腫になるかもしれないし、ならないかもしれないしわからないということです。

今回みたいに長期的に見ていくと、胆泥症から胆嚢粘液嚢腫に変わっていく(ように感じる)症例に出会うことがあります。

このことから、

「胆泥症があるのであれば、念のため経過観察を行うことが重要」

だと考えられます。

また、テーマ②にも繋がるのですが、

胆嚢粘液嚢腫の治療判断は難しく、外科手術に踏み切るタイミングの見極めが非常に難しく、重要です。

重症度が高くなく、血液検査などでも異常がない段階では内科治療で経過を見ることもできますが、しっかりとした経過チェックが必要です。

何を持ってして胆嚢粘液嚢腫が重度と判断するか?

これがテーマ②です。

ここで出てくるのが、先ほどから出てきている

  • 胆嚢の大きさ

  • 胆嚢の流動性

に加えて

  • 胆嚢の収縮率

  • (血液検査)

などで「総合的に」判断していきます。

これがあれば確実に危険と言う指標もありますが、それが出てからでは手術のリスクが高く、対応が遅すぎます。

かと言って、やる必要がない段階で手術するのも手術リスクはゼロではないので、もちろん論外です。

しっかり手術適期を判断することが求められます。

 

またアースちゃんに戻りますが、

アースちゃんの場合

  • 胆嚢が大きくなった

  • 流動性が大きく低下

この2点が急速に認められたため、手術判断としました。

実際手術してみると

パンパンに膨らんだ胆嚢が摘出され、切開してみるとベタベタの粘液が充満していました。

これが胆嚢粘液嚢腫です。

手術を引っ張りすぎた時に起こるような、胆嚢破裂なども見られず、いいタイミングで手術することができました。

アースちゃんも元気に過ごしています。

可愛いですねー。

余談ですが、アースちゃんは病院でも物怖じせず、いつも明るくて愛されキャラで有名です。

術後もすぐご飯を食べてあっという間に退院して行ったのはさすがアースちゃんと言った感じでした。

 

少し難しい話も出て長くなってしまいましたが、少しでも気になることがある方は、ぜひご相談くださいね。

胆泥症は基本無症状ですが、胆嚢粘液嚢腫は症状が出てからでは遅い病気の一つですので、早期発見し、定期チェックしていくことが重要です。

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