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5月16日
症例集皮膚科・耳科について

その脱毛、諦めていませんか?

こんにちは、こにし動物クリニック獣医師の関原です。

みなさん、『アロペシアX』と呼ばれる病気をご存じでしょうか?
僕は小学生のころロックマンXにはまっていましたが、それは全く関係ありません。

 

今回は脱毛症の一種であるアロペシアXの説明と症例紹介をしていこうと思います。

○アロペシアXとは?

アロペシアXは日本語では『脱毛症X』と言い、ポメラニアンやトイプードル等の犬種に多く見られる皮膚病です。アロペシアXの一般的な症状は脱毛のみであり、それ以外の皮膚症状(痒みや炎症等)はほとんど見られません。ですが、脱毛部位に二次的な感染や炎症を伴うことがあり、そこから痒みを生じることがあります。

このように体幹部だけ毛が薄くなるのがアロペシアXの典型的な脱毛パターンです。

○診断

アロペシアXのXは、原因不明という意味を表しており、未だにこの病気を発症する明らかな原因は分かっていません。脱毛を引き起こすその他の病気を否定した場合に、アロペシアXと診断することができます。これを『除外診断』と言います。除外診断のために、様々な検査(血液検査、エコー検査、皮膚生検等)が必要となります。

皮膚生検は下写真のような、円形に皮膚を切り取る器具を用いて行います。

局所麻酔で皮膚表面に麻酔を施し、直径5mmほどの大きさで2、3か所生検します。全身麻酔と違い、体の負担が少なく短時間で終えることができます。

 

○治療

【内服薬】

複数のホルモン調整剤を併用する、「多剤併用療法」が本症の治療のメインとなります。副腎ホルモン、性ホルモン、甲状腺ホルモンに影響を与えるお薬を使います。お薬の効果が表れて発毛が見られるまでに、最短3ヵ月、平均6ヵ月は必要となります。最初の3~6ヵ月間は同様の治療を継続し、6ヵ月以降は症例の発毛状態に応じて減薬もしくは休薬していきます。治療効果が見られるまでにとても時間のかかる疾患です。根気強く治療を継続していくことが大切となります。

【避妊・去勢手術】

アロペシアXでは、脱毛の一因として、性ホルモンが影響しているのではないかと言われています。性ホルモンに対する治療は上述のように内服薬を使用する他に、避妊・去勢手術の実施があります。症例によっては、避妊・去勢手術をしただけで発毛が見られる場合もあります。

【サプリメント】

発毛促進作用のあるR&Uというサプリメントやビタミン剤を内服薬と併用することでより高い治療成績を得ることができます。また何らかの理由で内服薬が使用できないケースや、内服薬の副作用が強くでてしまったケースに対してもサプリメントは有効です。

【薬浴】

皮膚に感染やフケ、かさぶたが見られる場合には、薬用シャンプーを用いた薬浴が非常に有効です。皮膚の細菌感染が毛根に及ぶと脱毛の原因となり得ます。またフケやかさぶたなどの「剥がれた古い表皮」が残っていると、新しい皮膚への生え変わり(ターンオーバー)が起こらず毛も生えてきません。これらの脱毛や発毛阻害の原因を除去するのに、薬浴は非常に有効です。

 

○症例紹介

最後にアロペシアXの治療症例をご紹介します。

トイプードル、12歳、未去勢の男の子です。

 

初診時の写真です。

  

体幹部にはほとんど発毛が見られないのに対して、頭部だけは毛が残っています。

本症例は血液検査では何も異常がありませんでした。

そこでまずは去勢手術と皮膚生検を実施しました。

皮膚生検の結果、『アロペシアXに合致する組織所見である』との診断が得られたので、内服薬及びサプリメントをスタートしました。

その後副作用の発現などもあり、途中で休薬したり、脱毛部位に細菌感染が広く見られるようになったため、薬浴を行ったりして治療を継続していきました。

 

治療開始から5ヵ月後の写真です。

 

背中や首周りにかなり発毛が見られるようになりました。

新しく生えてきた濃茶色の毛と、ずっと残っていた古い白色の毛が混ざっています。

 

治療開始から1年後の写真です。

 

初診とは別人のようにきれいな毛並みになりました。

現在は完全に休薬し、再発がないか様子を見ています。

 

アロペシアXは原因が分かっていないため治療も思うようにいかないことが多いです。

ですが根気強く6ヵ月~1年間治療を続けていけば脱毛が改善するケースもあります。

もしおうちのワンちゃんに脱毛や薄毛が見られる場合や、一度治療を諦めてしまっている場合は、是非一度当院にご相談ください。

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